嘉悦大学の皆さん、こんにちは

 

“ちょっとおかしなMyself”のご紹介

 

ご覧の通り「東芝38年生の酒気」という風変わりなタイトルのホームページを開いております。“平凡なサラリーマン”でしたが、以下の通り、ホームページのタイトルと同じように風変わりなところのある男です。

         呑み込みの速い男

         Early Bird

         転石苔むさず?

         三つ子の魂ノホホン虫

         抜群の交際費比率    http://www4.ocn.ne.jp/~daimajin/Myself.htm

今回4世代も離れた若い皆さんとの接点ができ、私自身が若者に戻ったようにワクワクしています。前期に「インターネット・ビジネス論」、後期に「コミュニケーション・メディア論」の講座をそれぞれ担当させていただきます。「好奇心は若さのバロメーターである」という仮説によれば、私も皆さんの若さに負けていません。これまでの60余年間好奇心をもって見聞し学んできた経験の中から皆さんのお役に立つ情報を摘出してお伝えしたいと思っております。宜しくお願いします。

   

事の発端

 

そもそも皆さんと私の間に接点ができたきっかけは1999年11月に遡ります。東芝から当時の嘉悦女子短大教授に転身していた坂口寿一さん(*)から、「佐々木さん、2003年に新設されるインターネット・ビジネス論の講座を担当できる技術者を紹介してもらえませんか」という照会を受けたのです。私は即座に「ビジネス論なのになぜ“技術者”ではなくちゃならないんですか」と主張して“事務屋”の自分自身を売り込んだのでした。

(*)坂口さんと私の間柄についてはSHOCのページをご覧下さい。

 

「事務屋」と「技術者」

 

東芝、特に私が所属していたコンピューター部門には「技術者にあらざれば人にあらず」というような風潮がありました。「技術者」に対して「事務屋」という言い方、また、「技術者崩れの事務屋」という言い方がこれを端的に表していると思います。現にコンピューター部門の経営企画やマーケティング企画推進を担当する企画室長には、コンピューターの設計・製造にあたる青梅工場と府中工場から「技術者」が順繰りに送り込まれてきておりました。経営企画やマーケティングは本来「事務屋」の領域であり、実際私のように他の分野での経験豊富な者がおりながら登用されない仕組になっていたのです。そのため、俄か勉強をした「技術者崩れ」の企画室長から、「佐々木さん、マーケティングというものはですねえ…」などと覚えたてで生硬な説教をされて辟易としたこともあります。

 

「技術者」重視の根拠

 

イギリスでは、数学は論理学の延長線上に位置づけられており、事務系の学問領域とされているのだと聞いたことがあります。現に、東芝でも「技術者」よりも遙かに論理的な思考をすることのできる「事務屋」がたくさんいました。それなのに「技術者」が非技術のビジネス部門でも優先起用されていたのは、東芝の社長をされていた青井舒一さんの考え方が大きな影響を与えていたためではないかと思っています。「事務屋にできない技術者の仕事はあるが、技術者にできない事務屋の仕事はない」と言われていたのだそうです。青井さん自身は真摯なお人柄で大好きだったのですが、どうもこの技術者万能仮説だけは納得することができませんでした。仮説を検証することなく鵜呑みにして「事務屋」を軽視していた周辺の「技術者」に問題があったのでしょうが。

 

技術者万能仮説の誤り

 

確かに、「事務屋」の私にはコンピューター設計などの「技術者」の仕事はできませんでした。しかし、翻って考えてみると、発電機の技術者ならコンピューター設計ができたのだろうか、更に言えば、ソフトウェアの技術者にハードウェア設計の仕事ができるのかどうか考えると、どうも怪しいものだという気がします。要するに、技術者万能仮説からは「技術者にもできない技術者の仕事もある」と言う仮説が抜け落ちていたのではないかと思えるのです。実際、コンピューター部門の経営会議で理解できない技術用語を耳にした時に、臨席にいた“万能”のはずの技術者にその言葉の意味をこっそり聞いたところ「さあ…?」という答えが返ってきました。「佐々木さんが質問してくれたお蔭で私も初めて理解することができました」と変なところで感謝されてしまいました。

 

「事務屋」からの脱皮

 

しかし、もう一度翻って考えて見ますと、「事務屋」としても「ここは我が領域」と主張できるところを持っていなければならないと思います。特に、経理や法務関係の領域には技術系の世界と近い要素がありますから、我々「事務屋」の仲間でも経理屋や法律屋は専門性を評価されており、さすがの「技術者」もここまでは踏み込んでこられない「事務屋」の聖域であったと思います。その点で、嘉悦大学が会計リテラシー習得を学習課題として重視しておられるのはまさに正鵠を得た考え方であると思います。大いに会計リテラシーを軸にしてビジネス・リテラシーを磨き上げていかれて、「事務屋」ではなくて専門性を備えた「ビジネス・パーソン」として成長してゆかれることを期待しております。

 

仮説の構成が鍵

 

しかし、会計(経理)や法務と違って、ビジネスやマーケティングの領域には、会計原則や法体系のような普遍的なルールや尺度がありません。ゲームで言えば、相手の手の内が分かる囲碁・将棋と違って麻雀に似ていて、不分明な情報を読みながらリスクを犯して意思決定しなければならないところがあります。従って、ここは経営や経済事象について、一つ一つの表面上の現象に振り回されることなく、本質にさかのぼって因果関係を追及することによって自分なりの考え方(仮説)を構成しそれを体系立ててゆく必要があります。「インターネット・ビジネス論」と「コミュニケーション・メディア論」では可能な限り私なりの仮説とその構成の仕方をご紹介したいと思っております。皆さんのビジネス・リテラシー習得の一助になればと願っております。 

 

講義実施に当たっての基本的なスタンス

 

1963年に通信機事業部に入社して、2001年にコンピュータ・ネットワーク事業部で定年を迎えるまでの38年間、(株)東芝のTT事業部門を中心に様々なビジネス体験を積んできました。また、(株)東芝在籍中からの三井業際研究所の関連で三井系各企業やMTT等とコンタクトできたこと、更に(株)東芝定年退職後に日経連関連の国際IT研修コーディネーターを体験できたことも自分自身の「インターネット・ビジネス論」や「コミュニケーション・メディア論」の構成に大いに役立ちました。極力、情報の受け売りはしないで、私自身の体験の中から実践的に有用と考えられる内容を抽出して講義によりお伝えしていきたいと思っております。

 

3Kの観点

 

情報通信論では技術用語が過度に使われる傾向があります。私自身も、しばらく関連会社で非IT系の仕事をしていて久しぶりに東芝のコンピュータ部門に戻った当初は技術用語の氾濫に悩まされ、部内会議の議事録をとることさえできず、「議事録がとれれば一人前」と思ったほどです。ですから、「インターネット・ビジネス論」と「コミュニケーション・メディア論」の講座をお引き受けした時に先ず思ったのは、「分かりやすいビジネスとマーケティングの言葉で講義しよう」ということでした。そして、私のこの考え方は、嘉悦短大70周年記念式典で佐野学長(当時就任予定)がされたご講演の中の「3K(経済、経営、経理ないしは会計)の観点で講義してほしい」というご示唆と合致しておりました。自分自身が大学生時代に経済学部で学んだことの中で、その後の社会人生活でもっとも役に立ったことは何だったのだろうかと振り返りながら、3Kの中でもより基本的なものの見方を学んでいただくのが最善なのではないかと判断して講義の準備を進めてまいりました。

 

“読みこなす”こと

 

「3Kの観点から基本的なものの見方をする」ことを学習テーマとして掲げた時、すぐさま私の脳裏に浮かんできたのが3Kの代表的なメディアである日本経済新聞でした。そこで、「インターネット・ビジネス」と「コミュニケーション・メディア」に関する同紙の報道を収集・分析・加工すれば、両テーマに関する実践的な情報を提供できるばかりでなく、「基本的なものの見方」の一例として参考にしていただけるのではないかと考え、早速、日本経済新聞の記事収集を始めました。そしてこれがまた、上記の佐野学長(当時就任予定)ご講演の中の「日本経済新聞を読みこなすだけの力をつけてほしい」というお話とたまたま符合することになりました。“読みこなす”ということは、記事の内容を単に“理解する/覚える”のではなくて“評価しながら自分の見解(仮説)の中に採り入れる”ことに重点がありますので、メディア・リテラシーの真髄なのではないかと思っています。新聞記事に限らず、テレビ報道、更には権威者といわれるような人々の様々な見解等についても、ただ鵜呑みにして受け売りすることはやめて、自分の考え方の中に体形立てて採り入れる習慣を学生時代から身に付けていって欲しいと願っています。

 

テキストについて

 

基本的には、日本経済新聞の記事を講義の素材として用いますので、同紙の「インターネット・ビジネス」及び「コミュニケーション・メディア」に関する記事には極力目を通しておくことをお勧めします。しかし、具体的に講義で用いるテキストについては、当ホームページの「インターネット・ビジネス論」と「コミュニケーション・メディア論」に逐次書き溜めてゆくことにします。もちろん、このテキストも鵜呑みにしたり受け売りしたりしていただく必要はありません。評価しながら自分の見解(仮説)の中に採り入れてください。予め、講義やテキストの内容についてリクエストを頂ければ極力反映させていただきますので、トップページの「Mailボックス」から気軽にアクセスしてリクエストや反論などをお送り下さい。対抗仮説を講義の場でご披露いただくことも大歓迎です。気軽で自由な雰囲気の中で最大の満足感が得られる講座にしたいと願っております。