コミュニケーションメディア論 |
第8課 記録(蓄積)メディアの 多様多彩化・高速大容量化 |
第7課までに考察してきたコミュニケーション・“メディア”は、「テレコミュニケーション(Telecommunication)」にしても「テレビジョン(Television)」にしても、「テレ(Tele)」が「遠隔地の」という意味を持つ接頭語であることからも示唆されるように、伝える者のいる「空間」と伝えられる者のいる「空間」との「距離」を超えて“間を取り持つもの”でした。この課では、伝える者のいる「時間」と伝えられる者のいる「時間」の“間を取り持つ”記録(蓄積)メディアについて考察します。 |
1.記録メディアの種類
産業分野は言うまでもなく家庭にまでインターネットが普及し、マルチメディアの大量のデータが行き交う時代になっています。また一方では、デジタルカメラ、携帯電話などの新しい機器の登場・普及も著しく、これにともなって、そのデータを記録する記録メディアの利用もますます広範囲となってきています。(社)日本記録メディア工業会は多様化してきた記録メディアを以下のように分類しています。
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2.記録メディアの変遷
2−1.コンピューターの登場 最も人類の文化・文明の発展に寄与した伝統的な記録メディアは紙であり、これが文書・図形といった表現メディアの保存・伝達メディアとして機能してきました。やがて人類が写真・電気・電子技術を獲得するに至って、フィルム、録音・録画テープが開発され、記録メディアが多様化し、それぞれがコミュニュケーション・伝達メディアの機能を支えてきました。しかし、記録メディアの世界に最も大きな変革をもたらしたのは、何と言ってもコンピューターの登場でした。このことは、コミュニュケーション・メディアの変革史上最も大きなインパクトがあったのがコンピューターであったことと裏腹の関係にあるものですが、記録メディアがコミュニュケーション・メディアの一種として全体としてのコミュニュケーション・メディアの機能を支えるものであり、記録メディアの進歩なくしては、全体としてのコミュニュケーション・メディアの成長もあり得ないということを如実に示しているものでもあります。 2−2.コンピューターの記憶機能
人間は、外部のさまざまなデータをいったん頭の中に記憶することができますが、記憶する量には限度がありますので、重要な事項については手帳などに記録します。コンピューターにも、これと同様にデータや命令を記憶する機能があり、これが記憶機能と呼ばれています。コンピューターの記憶においても人間の頭の中への記憶とメモによる記憶の2種類の記憶方法があり、それぞれ主記憶(内部記憶)装置と補助記憶(外部記憶)装置によって記憶機能が実現されます。 コンピューターの頭脳である中央演算装置CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)で命令を実行する際に必要となるデータや情報を一時的に記憶する装置です。一般に、単に「メモリー」と言った場合は、CPUが直接読み書きできるRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの半導体記憶装置のことを意味する場合がほとんどです。特に、RAMを利用したCPUの作業領域は「メインメモリー」と呼ばれ、コンピューターの性能を大きく左右する重要な部分となります。 主記憶装置は電気的にデータや情報を読み書き可能な記憶(RAM:Random Access Memory)として記録します。そのため、極めて高速にデータの読み書きを行うことができますが、コンピューターの電源が切れると記録されていたデータは消えてしまいますので、長期間データを保存する装置としては向きません。実行中のアプリケーションやオペレーティングシステムもここに置かれます。CPUが直接やり取りするデータや命令を記憶します。
記録メディアとしてはRAMディスクと呼ばれる電子部品が用いられています。例えば、パソコンで使われているメモリーのDRAM(Dynamic Random Access Memory )の場合、4Mビットとすると、その内部に約400万個の微細なコンデンサーをもつ構成となっており、その一つ一つが1ビットの情報を記憶する仕組みになっています。コンデンサーに電荷がたまっていればデータは1、電荷がない状態ならデータは0なのですが、DRAMに内蔵されたコンデンサーはあまりにも小さく、蓄えておける電荷もとても微小で、放っておくと、1秒程度で放電してデータが消えてしまうほどです。そこで、DRAMでは一定時間ごとに各行の内容を読み出し、それを増幅してもう一度コンデンサーに書き戻すリフレッシュという作業が必要になります。常にデータの書き直しが行われて、休むことなく動き続けるところが「ダイナミックRAM(DRAM)」という名前の由来になっています。 最も一般的な補助記憶装置は「ハードディスク・ドライブ(HDD : Hard Disk Drive)」で、大多数のコンピューターに内蔵されています。内蔵式のハードディスク装置では、1〜数枚のディスクをモーターで高速回転させ、可動式の磁気ヘッドで全ディスクに同時にアクセスしデータを読み書きします。補助記憶装置の中でもアクセス速度は高速な部類に属します。データの読み書きの速度は主記憶装置に比べて低速ですが、電源が供給されなくても記憶が消えない仕組みになっていますので保存の必要なプログラムやデータを長期間かつ大量に保存することができ、主記憶装置の補助役を果たします。 また、CD−ROMのような記録メディアを取り出せるようなものや、「フラッシュメモリカード」のような記録メディアを差し込んで使うラップトップコンピューターもあります。補助記憶のための外部記憶装置(External Storage Device)に用いられる記録メディアとしては、磁気テープ、ハードディスク(Hard Disk)、フロッピーディスク(Floppy Disk)などの磁気ディスク(Magnetic Disk)の系列、RAMディスク(Ram Disk)などの半導体系列、MOやCD−ROMなどの光ディスク系列などがあります。 2−2−3.記録メディアの多様化・多彩化主記憶装置用の記録メディアが高速大容量化するのと同時に、補助記憶装置用の記録メディアも大容量化し、80から100GByte程度のハードディスクを内蔵したデスクトップコンピューターや、20から60GByte程度のハードディスクを内蔵したラップトップコンピューターもごく普通に見られるようになってきました。ここに、コミュニケーション・メディアのブロードバンド(高速大容量)化の動きに、コンピューター自身が対応しようとする傾向が顕著に見られます。 しかし、コミュニケーション・メディアのデジタル化に端を発したマルチメディア化やモバイル化、デジタル放送ネットワーク化に対応した記録メディアの多様化・多彩化の傾向は、コンピューターに内蔵された主記憶装置や補助記憶装置ではなくて、外部記憶装置やカードリーダー等の入力装置に用いられる記録メディアの動向の中に見て取ることができます。 前課までに考察してきたコミュニケーション・メディアのデジタル化、コンピューター化、マルチメディア化、ブロードバンド(高速大容量)化、モバイル化、デジタル放送ネットワーク化といった新潮流は記録メディア側の技術革新があったればこそ生起し発展したものです。従って、今後とも記録メディアの動向も併せて把握しておかなければコミュニケーション・メディアの展開方向を予測することができないということになります。「1.記録メディアの種類」で掲げた表の示すように多様化・多彩化した記録メディアの中から、特にコミュニケーション・メディアの新潮流に呼応した記録メディアを抽出して以下に順次考察を加えていくことにします。 |
3.パッケージ・メディア
3−1.パッケージ・メディアとは コンピューターの外部記憶装置の中には、記録メディアを必要の都度着脱させることによって、データや情報の外部保存や他のコンピューターとの交換を可能にするものがあります。このような着脱可能で、配信(ストリーミング)ではなくて配送の対象となる記録メディアを「パッケージ・メディア」と総称することがあります。ですから、コンピューターの外部記憶装置は、パッケージ・メディアにデータや情報を書き込む場合には一種の出力装置として機能し、一方、パッケージ・メディアからデータや情報を読み取る場合には一種の入力装置として機能することになるわけです。 3−2.パッケージ・メディアの変遷
3−3.主要なパッケージ・メディア 主なパッケージ・メディアと、その記憶容量を列挙すると次のようになります。 ・フロッピーディスク 容量0.72MByte/1.44MByteなど ・CD−ROM 容量640MByte/700MByteなど ・MO 容量230MByte/640MByte/1.3GByteなど ・スーパーディスク 容量120MByteなど ・DVD−RAM 5.2GByte/片面4.7GByte/両面9.4GByteなど ・DVD−R 片面4.7GByteなど 特に、光ディスク系の記録メディアが多様化するとともに、用途を拡大してコンピューターの周辺装置としての外部記憶装置用メディアとして台頭してきているのが目立ちます。デジタルコード化オーディオプログラム収録済みの直径12センチの小型版(コンパクトディスク)が急速に消費者市場に浸透し、次いで、大きめのビデオ情報搭載版(レーザーディスク)が家庭での娯楽用と教育用に用いられ始められました。光ディスクは情報容量が大きく、また複製がし易いことがオーディオ・ビデオ関連メディアとしての用途にうってつけのものだったからです。 |
4.ハードディスク
ハードディスク駆動装置(HDD)は最も一般的な補助記憶装置で大多数のコンピューターに内蔵されています。その開発当時、「大量のデータを高速で扱う補助記憶装置・磁気ディスク装置はその技術の難しさから、メカトロニクスの極致といわれている。データが書き込まれる磁気ディスク(円盤)とデータの読み出し.書き込みを行うフラィングヘッドの浮上量はわずか0.3ミクロンしかない。これは、たとえるならジャンボジェット機が地上数メートルの高さを安定して飛んでいるのに相当する距離なのである」(図書「東芝 情報通信時代への提言」より)と評されたほどの精密機械です。
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5.CD(コンパクトディスク)
CDが誕生したのは1982年のことで、ソニー、日立、日本コロムビアによってデジタルオーディオディスクとしてのCDが発売されました。ステレオが開発されて(1958年)から24年後にデジタルオーディオの元祖CDが発売されるのですから、1982年は「デジタルオーディオ元年」と呼ばれています。 CDの出現はオーディオ業界にとってはデジタル音楽への一大革命でした。それまでに、オーディオの世界にもデジタルとの関わりが全くなかったわけではありません。コンピューターが発達した1960年代にはコンピューターで音楽を作るシンセサイザーが萌芽していましたし、1970年代にはPCM(Pulse Coded Modulation)といって音をパルスに変調してオーディオテープに録音していく技術が発達していきました。DAT(Ditigal Audio Tape)はこのPCM技術を使った方式です。しかしながら、オーディオの世界をデジタルに一変させたのはCDの出現に他なりません。なぜなら、それまでのアナログの総本山であるレコードを音楽販売店から一掃させてしまったからです。レコードに置き換わるだけの潜在性能をCDは持っていたのです。 1979年、フィリップスは現在のCDの基本である直径11.5cmのコンパクトディスクを発表。1980年にはフィリップスとソニーによって規格統一の合意に達し、本格的なCD時代が到来することになり、ディスクの直径はソニーが提案するφ120mmとなりました。ベートーベンの第九交響曲がそっくり入る67分を目安としたためこの直径となったといわれています。なお、CDの記録周波数は44.1KHzで、CD−ROMのデータ容量は640MByte/700MByteです。 CDの根本的な要件としては、デジタルに直すときの標本化(量子化)が通常の人間が許容できる範囲であること、取り込みエラーに対して十分な配慮がなされていること(信頼性が高いこと)と、使いやすいことが上げられます。このため、CDは音楽業界に受け入れられ、出版業界でも大容量メディアとして業界の標準となっていきました。さらにCDの特許を持つソニーはこのデータメディアをエンタテイメント(娯楽)の分野Playstationに投入しました。任天堂(ファミコン、スーパーファミコン)がICメモリーと基板で作ったソフトカートリッジでソフトを供給していたのに対し安価なCDで対抗したのです。Playstationの市場席捲にはこんな要因もあったのです。 5−3.競合・類似メディアとの相違点 オーディオマニアの中には、塩化ビニールのLPに針を落としてプレーヤーで音楽を聴いている人がたくさんいます。CDのデジタル音に比べアナログレコード(塩ビのLP)の方が、高音域がリッチで豊かな音を再生してくれるのだそうです。CDは1秒間に44,100分割(44.1KHz)で連続した音を分割し、その一つ一つに65,000階調(16ビット)の音の強さを割り当てています。従ってCDには44.1KHz以上の音は記録できないわけで、ここに、CDには豊かな音が出せないとマニアから言われている所以があります。 ・レーザーディスクとの相違 CDの対抗馬であるレーザーディスクは1972年、オランダフィリップス社で開発されました。このディスクは光学式ビデオディスクでしたがデジタルではありませんでした。1977年にこのビデオディスクを基本としてソニー、三菱、ティアック、日立、日本コロムビアがオーディオディスクを発売しています。 ・MDとの相違 CDの容量は60分で650MB。それに対してMDも同じ時間の録音ができます。MD=Mini DiskのサウンドはCDとほとんど変わらず実際のCDと同じ44.1KHz、16bit、ステレオというフォーマットになっています。しかしMDのコンピューター的容量は140MB、これはCDの約1/5の容量しかありません。したがって、MDにはATRAC(Adaptive Transform Accoustic Coding)という圧縮技術が取り入れられています。これは一種のマスキング効果で、例えば、大きな音と小さな音が重なっていると、小さな音は大きな音にかき消されてしまうことを利用してマスキングを行ないます。主に高音と低音の部分でマスキングを行い1/5の圧縮を行っています。聴く人が聴けば、ちょっと聴いただけではわからないMDの音も、本当によく聴いてみるとやや音質が落ちていることが分かるそうです。 ・SACD(Super Audio CD) スーパーオーディオCDとはソニーとフィリップスが共同開発した次世代オーディオディスクです。ここで採用されているDirect Stream Digital(DSD)方式は従来のPulse Code Modulation(PCM)方式とは全く異なる音声信号の大小を1ビットのデジタルパルスの密度(濃淡)で表現する方式です。何よりの特徴は「原音」により近い音を再生できること、そして、今までDVDでしか楽しめなかった5.1chサラウンドに対応したことです。今までの通常の音楽CDではカットされていた20KHz以上の周波数帯域の音データもスーパーオーディオCDなら録音、再生が可能なので、よりきれいで臨場感あふれるサウンドを楽しむことができます。 5−4.CD−ROM CD-ROM(コンパクトディスクを利用した読み出し専用メモリー)は、構造的には音楽用のCDとまったく同じもので、直径12pのアルミ盤を一種のプラスチックで表面加工したものです。この記録方式の場合、デ一タは非常に薄いアルミ箔に記録され、ピット(小さなくぼみ Pit)がアルミ箔に物理的にプレスされたくぼみの形になっています。アルミ箔は平らになっている部分では鏡のようにレーザー光線を反射して読み取りヘッドに反射光を届かせますが、ピットの部分は平面ではないのでレーザー光線が乱反射し、ピットに当たった光線は読み取りヘッドにまで届かないので必要な情報と区別されます。このタイプのディスクはアルミ箔を物理的に変形させることでピットを作るため、原盤さえ作ってしまえばプレス機で大量生産することができます。オーディオ用のCDには音声の情報が記録されていますが、CD-ROMには、音声の他に文字や図形の情報がレーザー光線によってピット(小さなくぼみ)として焼き付けられているのです。 CD1枚の記憶容量は開発当時は540メガバイトで、パソコン用のフロッピーの500倍、ICカードの250倍の容量を持っていました。その記憶容量の大きさを情報の種類と比較すると、音楽で74分、ナレーションで26時間、自然画で4000画面、グラフィックスで16,000画面、文字数で2億7500万文字ということになり、これはA4の原稿で27万ページ、商業紙の約一年分の情報量に相当することになります(昨今では、圧縮技術の進歩により、収録情報はもっと増大しています)。このような特徴から、CD-ROMは、文字情報だけでなく、音声や映像あるいはコンピューターの情報などを統合したパッケージ型マルチメディアの検索用ソフトとして注目され、パッケージ型電子メディアの主役の座を占めるに至ったのです。 CD-ROMを実際に利用するには、CD-ROMに収録されたデータや情報を、ドライブ(レコードのプレーヤーに相当する)を通じてパソコンに送り、検索用のソフトを使って、パソコンのディスプレイ上に文字や画像を呼び出して使うことになります。ところが、開発当時は、パソコンの普及率も悪く、また、CD-ROMドライブはほとんど普及していませんでした。パソコンのCD-ROM専用ドライブ内蔵型の機種が当たり前になっている現在を考えると、如何にCD−ROMのビジネス用ニーズが大きいものであったのかということをうかがい知ることができます。 ディスクに「反射層」と「記録層」を設けることでデータの記録を実現しています。反射層とは、文字どおりレーザー光線を反射させる部分。その反射層の手前に置かれる記録層に、レ一ザ一光線を透過させる部分と遮る部分とがあります。透過させる部分を通過したレ一ザ一光線だけが反射層に届いて反射し、読み取りヘッドがその反射光を電気信号に変換するという仕組みになっています。 このタイプのディスクは記録層に有機色素を使い、レーザー光線の熱でこの色素を変色させることでピットを形成します(「焼く」という表現はここからきています)。黒く変色した部分はレーザー光線を吸収してしまい、反射層にまで光線が届きません。一方変色していない部分はレーザー光線を透過/反射させるという仕組みになっています。 黒く変色した色素は半永久的に元に戻ることがないので、一度記録されたデータを書き換えることはできません。もっとも、紫外線によって色素が変質して黒い部分の色が薄くなることはあります(これを褪色という)。記録層には褪色防止剤が含まれてはいますが、記録面を直射日光にさらしたり、蛍光灯の光に長時間さらしたりはしないほうが安心です。 5−6.CD−RW 書き込んだデ一タを消去したり書き損えたりすることができます。この特徴は、記録層に有機色素ではない材質を用いることで実現されています。 この型のCD/DVDは「相変化型光ディスク」で、その記録層にはアモルファス素材が使用されています。アモルファス素材はレーザー光線によって加熱することで状態(相)が変化し、光の透過率が変化するという特徴を持っています。読み出し時にはその透過率の違いによる反射率の変化を「0」と「1」に置き換えています。熱による相変化は可逆変化なので、光を通しにくくなった部分を、元どおり光を通すように戻すことができます。これがCD-RW型ディスクにおけるデータの消去/書き換えの原理です。 ただし、相変化によるアモルファス素材の透過率の変動は比較的低く、光線を通しやすい状態での透過率も比較的低いので、CD-RW型ディスクのデータを読み取る際は、CD-ROM型やCD-R型よりもデリケートな違いを読み取らねばなりません。 |
6.DVD(Digital Versatile Disk : デジタル多用途ディスク)
音楽用CDと同じ直径12cm、厚さ1.2mmの光ディスクに、動画や音声、テキストなどのあらゆるデジタルデータを収録して再生するDVDは、オーディオ・ビデオ用だけではなくコンピューター用データ・情報の記録・再生にも適する総合記録メディアですから、映像、音声、データが融合して新しい世界を開くマルチメディアの時代にふさわしい記録メディアと言えます。 DVDがマルチメディア時代のキーデバイスとして脚光を浴びたのは、まず何より、DVDに直径12センチメートルの小型ディスクにして4.7Gバイトという巨大な情報を記録できるという大きな特長があったからです。このため、映画を1本まるまる納めることができ、さらに従来では、映画館でしか味わえなかった迫力のある大画面と臨場感のある音声をそっくりそのまま家庭でも楽しめるようになったのです。 6−2.規格化の経緯 もともとは、CD特許の延長線上にあるMMCD(MultiMedia Compact Disk)規格とCD特許とは別路線のSD(Super Density Disk)規格が考えられていました。MMCD規格はCDと同じ厚さ1.2mmの基板を使って片面2層方式で記録し、一方のSD規格は厚さ0.6 mmの基板を2枚貼り合せて12mmの厚さを実現するというCDとはまったく違う方式で両面2層方式の記録を行なう方式です。両規格間の互換性が問題になり、最終的に統一された規格では、SD規格の0.6mmの基板を貼り合せる方法を採用し、MMCD規格からは8/16変調が採用されました。現在のDVDの基になったSD規格は東芝が主導して開発を行ったものです。開発の第一の目標は映画を記録することでした。このため東芝はタイムワーナー社と規格を話し合い、さらにハリウッドの大手スタジオと規格の討議を行ないました。また、DVDはコンピューター用の記録メディア・機器としての用途が大きいため、米国の大手コンピューターメーカの要望をも考慮して規格化が行われました。 6−3.技術革新DVD実現のためには多くの解決すべき技術課題がありました。そのうちで最大の難題は直径12cm程度の光ディスクに数Gバイトのデータを記録することにありました。このためには従来のCDやLDの厚さが1.2mmであることから、0.6mmのディスクをはり合わせるという新しい構造が採用されました。そのほか、高密度原盤記録技術、短波長赤色レーザー、高性能のデジタル変調方式、エラー訂正方式、映像信号圧縮方式、デジタルサラウンド方式が開発、採用されてDVDはでき上がったのです。 DVDには、映画などを記録するDVD-Video、音楽用のDVD-Audio、データ用のDVD−ROM、一回記録のDVD−R、繰返し記録のDVD-RAMがあり、これらのフォーマットは統一したコンセプトの下に構築されています。したがって、映像、音声の分野およびコンピューターの分野で共通して使えるように配慮されており、また記録・再生用と再生専用の間の互換性も考慮されており、また従来のCD、CD−ROMとの互換性も当然ながら確保されています。 DVD-Videoとしての特長は、LD以上の高画質と臨場感あふれるサラウンド音声です。言語は8チャネル、字幕は32チャネルまで記録・再生が可能です。また、同時に9チャネルまでの映像を同時に記録できるマルチアングル機能や、同時にストーリー展開が可能なマルチストーリー機能など新しい機能がありますので、これらを駆使した新しい文化の創造が期待されています。 DVD−ROMは、CD−ROMに比べると、容量が約7倍でありデータレートも9倍なので、早晩CD−ROMにおき変わっていくことが想定されます。また、DVD−RAMにはなお記憶容量拡大の余地がありますが、ブロードバンド・インターネットの普及を基軸として、ビジネスにおける映像をはじめとした大容量データ・情報の比重が大きくなるのに伴って、DVD−RAMの需要が高まってゆくことが確実視されています。アクセス性に優れた記録メディアとして、DVDが今後のマルチメディア時代の中核デバイスとして広く普及していくものと考えられます。
映画の鑑賞用としてだけではなく、ビジネス・ツールとして、あるいは家庭用の記録メディアとしてDVDが導入される領域が急速に拡大してきました。以下に関連の新聞報道をご紹介します。
一度だけ書き込み可能(ライトワンス)なDVDで、DVDフォーラムで正式に認定されている規格。一度書き込んだデータは消去できないため、大事な映像やサウンド、データなどを保存しておくのに向いています。CD-Rと同様に色素記録層を持っており、レーザー光線を照射して色素を変化させることによってデータを記録します。一度変化した色素は元に戻らないため同じ箇所への書き込みが1回だけとなるわけです。書込みをしたディスクは基本的にDVD-ROMやDVDビデオとして記録すれば、DVDプレーヤーやPlayStation2、DVD-ROMドライブ付パソコンで再生することができます。片面4.7GB。
パイオニアが世界初のDVDレコーダーとして実現した規格で、DVDフォーラムで正式に認定されています。 フォーマットいらずで、何度も自由に書込み・追記・消去ができるDVDで、DVDフォーラムで正式に認定されている規格。AV機器とパソコンの両方に対応したフォーマット。他の書き換え可能ディスクとは違って、FDやMOディスクのようにマウスでドラッグ&ドロップでファイルの出し入れすることが可能です。書き込みにベリファイ処理(データ照合確認)を行うため、データの信頼性を保つことができます。 DVD-RAMメディアは、CD-RWと同様に相変化記録層を持っており、照射するレーザー光線の強さを変えることで結晶状態を変化させて書き込みを行ないます。書き込み回数10万回以上と耐性に優れていて、両面に記録できるメディアやケース付のメディアもあります。但し、DVD−RWやDVD+RWとの互換性はなく、専用のドライブやレコーダーでしか再生できません。片面4.7GB 両面9.4GB。 6−11.DVD+R2002年に登場した新しい規格で、DVD-Rと同様に一回だけ記録できるDVDディスクです。DVD-Rと同様に、物理特性がDVDビデオやDVD-ROMとほぼ同じで、作成したディスクを、既存の多くのDVD-ROMドライブ/DVDビデオプレーヤや家庭用DVDプレーヤーで再生できる互換性の高さが特長です。アクセスも高速ですので、オリジナルDVDビデオの配布や長く残したいデータの保存に最適と言われています。 6−12.DVD+RWDVDフォーラムではなく「DVD Alliance」という組織による規格です。DVD-RWとの大きな違いは、フォーマットの待ち時間が短いこと、及び、DVD+VRフォーマット対応で他では不可能な保存したビデオの追記・編集が可能な点が挙げられます。ほとんどの家庭用DVDプレーヤーで再生可能ですが、PlayStation2では再生できません。約1,000回の書き換えが可能。片面4.7GB。
外見的には CD と同じ直径 12 cm、厚さ 1.2 mm というサイズで素材もCDとほぼ同じの DVD メディアですが、実は厚さ 0.6 mm のメディアが2枚重なったものとなっています。またそれぞれが片面最大 4.7 GB の2層の記録面を持ち(デュアルレイヤー)、理論上最大で4つの記録面と、合計 17 GB の記録容量を持つ構造となります。つまり DVD は片面一層分だけでも FD(約 1.44 MB)の約 3263 枚分、CD(650 MB)の約8枚分もの大記録容量を持っているのです。 データを保持する原理は CD とほぼ同じで、それゆえ各 DVD ドライブは CD メディアの読み出しにはほぼ完全な互換性を持っています。具体的には 12 cm の樹脂製円盤にレーザー光を照射し、その反射光を検出してデータを読み出します。CD と違う点は両面記録、二層記録などが可能なところで、物理的に裏返して使用することで両面、レーザー光の反射度を変化させることによって1面で二層の記録面を読み書きすることを可能としています。 但し、現段階では四面全てのレイヤーを使用したDVDメディアはまだ存在しておらず、データ保持における安全面等の考慮により記録面・記録容量に関しては各メディア毎に違いがあります。また、DVDはCDに比べ、記憶密度が高い為、仮に同じ転送速度のドライブで読み取った場合、転送される情報量はCDの9倍以上となっています。その為、映像CD−ROMでは、画像が不鮮明だったり、動きが滑らかでなかったりすることがありますが、DVDではそれらの心配もありません。 6−13.次世代DVD
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7.メディア・カード
8.その他の記録メディア
8−1.フロッピーディスク(Floppy Disk) 8−2.MOディスク(Magneto-Optical)) レーザーディスクと同じ光ディスクの一種です。光磁気ディスクとも言われているように、読みとりは光磁気ヘッドで行ないます。読み出しにレーザーを使う点はCD−ROMと同じですが、MOディスクはレーザーと磁気の両方の特性を使ってアクセスでき、読み出しだけでなく、何回でも書き込みができるという特性があります。 8−3.ストリーマー(Streamer) 記録媒体は磁気テープであり、外観は市販されている音楽カセットテープと変わりませんが、高密度にデータを記録することのできるストリーミング・モードでデータを記憶しているためにストリーマーとよばれています。記憶容量は、大きなものだと数十ギガバイト(GB)の単位で記録が可能で、他の磁気メディアより大量のデータを記憶することができますがが、磁気テープを使用しているため読み書きには時間がかかります。 また、他の補助記憶装置はどの場所からでもランダムにアクセスすることが可能であるのに対し、ストリーマーはテープという形状からくる制約のため、先頭から順番に読み書きする方法(シーケンシャルアクセス)でしかアクセスできません。このため、通常は、ハードディスクなどのバックアップ用として使用されています。 8−4.RAMディスクRAMをそのまま補助記憶装置として使用する場合に用いますが、実際には主記憶装置の一部をRAMディスクとして利用する場合が多いようです。この装置は主記憶装置と同じメモリーを使っていますので、データをやり取りする速度は、ハドディスクなどの磁気媒体より高速ですが、記憶容量はハードディスクほど大きくありません。 8−5.USBフラッシュメモリ USBコネクタとフラッシュメモリを一体化させた小型ストレージ。現在は32-265MBが主流。フロッピーディスクに収まりきれない大容量のデータ交換に便利です。 8−6.DAT(磁気テープ)カートリッジ型の磁気テープ。数から数十GBの容量を持つ。アクセス速度は低速ですが信頼性が高いため主にバックアップ用に使用されています。 |
(Ver.1 2004/ 1/ 4)
(Ver.2 2004/ 9/12)
(Ver.3 2005/ 1/ 1)
(Ver.4 2007/ 1/ 9)
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